2022年 銀賞受賞
株式会社アクロバット
田中 貴弘さん(コピーライター)| 伊藤 佑也さん(アートディレクター)
1秒足らずのコミュニケーションの中で、
何をどう伝えるか。
2022年のジャパン・シックスシート・アワードにて銀賞を受賞された田中さんと伊藤さん。
日頃は広告制作会社にお勤めのお二人に、課題を選択したポイントや、制作に至るまでのアイディアの膨らませ方など、さまざまなお話を聞かせていただきました。
2022年銀賞作品 課題:スウェーデンハウス
審査員総評抜粋:「これからの家づくりを検討中の方に、スウェーデンハウスを見てみたいと思ってもらえるクリエイティブを」という課題に対し、その期待にとても心地よく軽やかな感じで応えながらも、同時にCO2の排出量が少ない長期優良住宅ということを、説明無く一発で納得させる説得力もあるところが素晴らしいと思います。街角に優しい空気を醸し出す作品でした。
応募に至るまでのいきさつを教えていただけますか?
ここ数年、自分達のアイデア力を衰えさせないようにという意味もあって、2人で組んでさまざまな賞に応募をしています。Japan Six-sheet Awardは、審査員に尊敬している方が多いことと、受賞すると実際に掲出されることが魅力でチャレンジを続けています。
お仕事での制作とプライベートワークとの対比など伺えますでしょうか。
実際の仕事ではさまざまな制約があり表現の幅が限られてきますが、公募はそうしたことを気にすることなくアイデアを自由に広げられるのが魅力です。ワンアイデアでつき抜ければOKという、自分のクリエイティブ力を思う存分試せる場だと思っています。脳のリミッターを外すような感覚でアイデアを考え、表現できるのが楽しいです。シンプルな表現が好きなので、ワンビジュアル&ワンキャッチでどこまでスピード感をもって伝えられるか、というのを試すいい場だと思って取り組んでいます。
この課題を選んだ理由についてお聞かせください。
いくつかの課題に挑戦しましたが、スウェーデンハウス様は商品のセールスポイントが「長持ちする住宅」と非常に明快だったため、アイデアも考えやすいかと思いいちばん最初にとりかかりました。オリエンが明快だと何をメッセージすれば良いかにあまり悩まずに済むので、とても楽しくアイデアを考えることができました。
クリエイティブの制作において、
アイディアの膨らませ方のコツなどがあればお聞かせください。
「長く住める住宅」ということを、どれだけスピーディに伝えられるかに力点を置いて考えました。先ほどと重なりますが、オリエンが明快だったのでそこをどれだけスピード感と面白さを持って伝えられるかが勝負どころかと思い、さまざまなアイデアを考えました。その中で出てきたのが年輪を家の形にするというアイデアでした。最初は普通だなと思い、ボツにしようかと思いましたが「長く住める」「木造」ということを一目で伝えるのにいちばん速いと思い直しました。実際に作ってみたら、意外と違和感があって面白いビジュアルになったと思います。キャッチフレーズは「長く住める木造住宅」というテーマを見た時から、なんとなく近年の「人生100年時代」というキーワードが思い浮かんではいました。それを頭の片隅に置きながらスウェーデンハウス様のホームページを見てブランドのことを知っていくうちに「100年住み継いでいく家」というコンセプトを目にし、非常に親和性が高いと思い、このビジュアルに合わせることにしました。
シックスシートならではというフォーマットをどのように意識されましたか?
大きな媒体ですが、街中のさまざまな情報の中ではきっと埋もれてしまうと思い、シンプルなビジュアル表現を心がけました。遠くを歩いている人やバスに乗っている人からも見えるように、面をいっぱいに使ったビッグビジュアルがいいなと思いました。
多様に変化する社会における広告の役割についてのお考えを教えてください。弊社媒体を含む屋外広告、さらには広告全般におけるメッセージはどのように変化していくでしょうか?
日常で触れる情報はどんどん増えていますが、人が処理できる情報は限られています。その中でどう心に残るものを作るかの工夫が大切だと思っています。屋外広告で言えば、通り過ぎる際にチラッとしか見られない1秒足らずのコミュニケーションの中で、送り手は何をどう伝えるのかをますます考えていかないといけないのではないかと思います。広告は基本的には見られないものですし、苦しい状況ではありますが、その中でも面白かったり琴線に触れたりする広告は話題になったりすることもあるので、表現やメッセージ次第でまだまだ可能性があると思います。
今後の目標をお聞かせください。
自分たちの腕を試すという意味でも、今後もこうした公募へのチャレンジは続けたいです。そこで培ったアイデア力を、実務にフィードバックしていけたらと思っています。